エンジニアリング組織論への招待を読んで 〜歴史と技術と組織論〜
TL;DR
- エンジニアリング組織論への招待を読んで、最高だったので、おすすめする記事です
- 最高になっているので、エモめ
- 歴史はいいぞ
- エンジニアリング組織論への招待はいいぞ
始めに
出た当初、結構話題になり、知っている方も多いと思いますが、エンジニアリング組織論への招待を読みました。
内容があまりにも好物だったので、技術評論社に誤字脱字訂正まで送ってしまった。
何がよかったのか、内容をかいつまみながら説明していこうかと思います。
内容
5章立てとなっており、目次は以下の通りです。
- Chapter 1 思考のリファクタリング
- Chapter 2 メンタリングの技術
- Chapter 3 アジャイルなチームの原理
- Chapter 4 学習するチームと不確実性マネジメント
- Chapter 5 技術組織の力学とアーキテクチャ
Chapter1から順に、個人の思考 -> 1対1の関係 -> 1対多(チーム)の関係 -> プロダクトとチームとの関係 -> アーキテクチャと組織の関係という風に説明されていきます。 詳細は読んでください。
何が良かったのか
一言で言えば、歴史的背景の解説を丁寧にしてくれている点です。 例えば、昨今、流行りのアジャイルについてその思想的背景から説明してくれている本はなかなかないと思います。 アジャイルという思想の源流を辿れば、そこには世界に冠たるトヨタのかんばん方式があり、さらにその後ろにはデミング博士の開発した馴染み深いPDCAサイクルがいます。 そして、その隣には戦後から続くベトナム戦争で疲弊したアメリカ国内での思想潮流の変化と東洋文化の融合がいるわけです。 ジョブズが東洋思想に傾倒していたのはそれなりに有名ですし、シリコンバレーがカリフォルニアにあることもちょっと世界地図を見れば分かりますが、この2つに関係があるとはまったくもって知りませんでした。 まったく関係なさそうに見える事柄でも、意外な関係にあるものはそれこそ無限にあります。 それを紐解いていける手がかりの1つが歴史だと思います。 きっと、要素分解的な思想を持つ西洋文明の裏には、第一次世界大戦がいますし、産業革命がいますし、ルネサンスもいます。一方で東洋文化の裏には、明治維新がいますし、清帝国がいますし、インドや東南アジア諸国も関係してくるでしょう。 このダイナミクスに心がウキウキしてしまいませんか? 今まさに、そういう世界に生きていると思うとちょっと楽しくなってきます。
少し脇道にそれると、私は大学で経営学をやり、高校では世界史と日本史がやりたいから文系(もちろん、数学・理科が苦手だったのもある)に行ったタイプの人間です。 なので、一見関係ないけれども、歴史を振り返ると実は関係があるものが大好物なのです。
本書は、コンピューターサイエンスがめちゃくちゃ好きでコードを書いているタイプの人には刺さらないと思います。 ある程度、経済学・経営学を学んだことがあって戦後の経営学の流れが分かっていると一層面白いと思います。 もっと言えば、戦後のアメリカ史も軽く学んでおいたほうが面白いと思います。
組織とアーキテクチャについて
コンウェイの法則は圧倒的に正しい。 業務でフロントエンドがメインで、マイクロサービスの話がアツいので興味があったりするんですが、これも組織構造の話と切っても切り離せないなあと思うことしきりです。 興味ある人は以下をどうぞ。 www.atmarkit.co.jp
歴史について
何かについて深く知りたいってなったときに歴史に当たるのは結構重要だと思います。
最近だと、Real World HTTPもHTTPの発展の歴史を織り交ぜつつ、コードとロジックで実践するタイプの本になってて、めっちゃ良かったです。
1年どころか1ヶ月1週間で劇的に状況が変化していく今だからこそ、歴史に当たるというのも大事なことだと思います。 Libraryの歴史とか、言語の歴史とか。
最後に
エンジニアリング組織論はいいぞ。
P.S.
著者さんのTwitterのbioに『「エンジニアリング組織論への招待」というタイトルの本を書きました。控えめに言って名著です。』って書いてあって笑いました。 悔しいですが、控えめに言って名著です。